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「特殊メイクがヤバい…」映画『ザ・ホエール』は面白い? 忖度なしガチレビュー【あらすじ キャスト 考察 解説 評価】

text by 山田剛志

本年度アカデミー賞で主演男優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した映画『ザ・ホエール』が公開中だ。主演は映画『ハムナプトラ』シリーズで人気を博していたブレンダン・フレイザー。特殊メイクで体重272キロの男を演じたフレイザーの熱演が光る本作は面白い? つまらない? 忖度なしのレビューをお届けする。(文・山田剛志)

主人公は体重272キロの男…。
クラシカルなスタイルで生の呼吸を活写

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巨大な肉の塊がスタンダードサイズの画面を占拠する。脂肪が臓器を圧迫するのか、笑い声を上げるたびに鋭く走る胸の痛みに顔をしかめるその男のフォルムは、まるで、浅瀬に乗り上げ、身動きが取れなくなった鯨のようだ。呼吸は荒々しく、彼の身に忍び寄る死のカウントダウンのように聴こえてくる。

117分の上映時間の間、観客の耳は、体重272キロの大学講師・チャーリー(ブレンダン・フレイザー)の荒々しい呼吸音にさらされ続け、視点は終始、暗く雑然とした彼の部屋にとどまり、ほんのわずかな例外を除いて屋外に出ることはない。

2008年公開の『ザ・レスラー』では、ガス・ヴァン・サントやダルデンヌ兄弟の作品を思わせるステディカムを用いた流麗な移動撮影で、主人公の中年レスラーがリングの内と外を往還する様子を捉えてみせたダーレン・アロノフスキーだが、本作では、自由なカメラワークを封印し、チャーリーと個性豊かな訪問者たちとのやり取りを、カットバックとカッティング・オン・アクション(アクションつなぎ)を駆使した古典的なスタイルで活写する。

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